“何もないとしたら”巻頭言
私は非常に永い間、他者に、すべての他者に帰依し続ければ、
他者に出会うことができると考えていた。
それは、間違っていた。

私は非常に永い間、他者を、すべての他者を否定し続ければ、
自我は確立されると思っていた。
それは、間違っていた。

自我を確立させつつ、いかなる依存、いかなる信仰も自らに許す事なく他者に帰依する事、
自己意識によって自己意識を否定し続ける事、
これが最も困難な、そして唯一正しい道だと思うようになって、一体何年経つだろう。
時折、それは、間違っているような気がする。

影を統合していく事で、
病を癒していく事で、
可能性に身をさらす事で、
他者と関わる事で、
他者は遠ざかって行く。

(C)2000 Mushio Funazawa

1998年に“友人が小冊子を作っている”という話を聞いた時、その小冊子の為に、アルバム「夜明け前双つ」に収録されている楽曲「何もないとしたら」をピアノ用に編曲した譜面を作成した事があります。上の詩は、その譜面に言わば“巻頭言”として添付した詩に、若干の加筆を施したものです。(その小冊子には、結局譜面も詩も掲載されませんでした。)


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