霊機ライブvol.6の為の無題詩

 「今より悪くはならない」と思う。

やがて、そう思っていた頃が幸福に思える程悪くなって、
「今より悪くはならない」と思う。

これを何度も繰り返す。
繰り返す内に、本当にこれ以上悪くなり様のない所まで来る。
もはや希望に悩む事も、絶望を苦しむ事も、ありはしない。

しかし何年かすると、干上がった川の砂が蒸発するかの様に、
一切が存在する事をやめ始める。

そして虚無が訪れる。

虚無の中で、まるで存在すら知らなかった内臓でも痛み出すかの
様に、全く思いがけない苦痛が走る。

その苦痛は、想像だにしなかった全く新しい苦痛を、内に外に、
次々と生み出して行く。

そしてそれすら、ほんの始まりに過ぎないのだ。

 

こういったプロセスのいくつかの時点で、
「空が青い」
「花が咲いてる」
「誰かの笑い声が聞こえる」
といった事が、
どうしようもなく嬉しくなる時期が来る。

もしかしたら私は、それについて考えるべきなのかもしれない。

人は、思考も、感情も、意志も衝動も破壊された時、
一人の幼児として世界に接するしかないのだろうか。

子供になる弱さ。子供にならない弱さ。 

 

(C)1997 Mushio Funazawa

 上の詩(らしき文章)は、1996年10月に六本木ストライプハウス美術館
にて行われた「シンセサイザーライブ『霊機Vol-6』」の為に書かれ、ライブ
当日、会場ロビーに掲示されたものに、若干の加筆訂正をしたものです。


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