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文章リスト

(かなり古い文章ですが、どなたかの役に立つかも知れませんので、一応削除せずに置いておきます)

使用している主なシンセ
 
はじめに
〜1〜
以下の文章は、いわば、
「メロディーや和音やリズムと同じ様に、私は音色が思い浮かぶ。その脳裏に響く音色(乃至音響) を実現するためにシンセサイザーを使用する」
という、本来の〜そして極めて少数の〜人々に、私のわずかな情報が多少でもお役に立てれば、と思って書かれたものです。
〜2〜
以下の文章に各シンセサイザーの欠点が出てきますが、これらには当然、多分に主観的要素が 入ります。又、私が「このシンセでこういう事は出来ない」と思っている事で、「実は出来る」、という様な事がございましたら、恐れ入りますがメールにておしらせ下さい。
以下、私が愛用している主なシンセサイザーです。
アンカーList:|TX802|クローマ・ポラリス2|K5000S|microKORG|A2|
YAMAHA TX802

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FM音源のDX7を改良した後継機種がDX7II、DX7IIをモジュール化したのが TX802です。
昔、ヤマハのDX7を発売とほぼ同時に買って、10年以上全く故障しませんでした。
故障はしませんでしたが、やはり10年以上も使い込むとヴォリュームにガリが出たり、 塗装がはげてきたりしていました。
たしか1995年だったと思いますが、とっくに生産終了のTX802が運良く新品で手に入ったので、DX7を知人に譲り、あとにはTX802が 残りました。
新品だから、あと10年は使えるだろうと思っています。
っていうか、壊れるまで使うつもりです。
 TX802に限らず、FM音源のいい所は、思い浮かんだ音色は大抵 作れてしまう、その圧倒的なサウンドレンジの広さにあります。但し、やはり 他の方式の音源に比べると音が非常に細い。
そこで私が良くやるのは、

1:

TX802で音を作り込む。

2:

出来た音色に、大体第4倍音が聞き取れるか、取れないか位まで (曲ごとに加減はもちろん違う)フィルターをかけたアナログシンセをレイヤーでかぶせる。

という技です。
「トランペットの音」とか「工事現場の音」という風に、既にこの世のどこかで鳴っている音、或いはそれに近い音を作るというのでない限り、(そういうのはPCM音源とかサンプラーの方が得意だと思う。) 「FMとアナログの組み合わせ」で必要最小限の音色表現は出来てしまいます。
でも、もちろんTX802にも欠点があります。

エディットがしづらい。

FM音源は、他の音源と違って何をどうすればどういう音になるか、 というのが極めて思い浮かべづらい。DX7をほぼ発売と同時に買ってから、FM音源を 使い続けているが、いまだに手探りの要素がかなりある。(「あ、あの音の周波数比は1:2:4.5だっけ」 とか覚えている音色もあるが、よほど好きで良く使うパターンでない限り覚えて いられない。)
しかも、TX802はモジュールだから、鍵盤付きのシンセよりも更にエディットしづらい。 私はDX7でエディットにかなり慣れていたので、TX802になってもほとんどまごつかなかったが、 (KeyTrackなどはDX7よりやりやすい)、FM音源を初めてさわる人がTX802を買っても、 多分プリセット音源になってしまうんではなかろうか。しかもこのシンセ、αダイヤルもデータエントリー用スライダーもない(思う場所まで+/ーボタンを押し続ける)。
ちなみに、私は時折、Seekers社製のUMC1688という汎用エディターをつないでエディットしています。全てのパラメーターをこれでいじれる訳ではありませんし、パラメーターをプリセット2つに割り振っているので“使い易い”とは必ずしも言えないのですが、これで多少は楽になる事は事実です。

システムが変。

まず、いきなり、シングルモードがない。基本的には常にパフォーマンス (マルチ)モードで動く。
ボイスセレクトモードっていうのもあるにはあるが、そこはパフォーマンスモードの ボイスを選ぶモードなので、そこでシングルの音色を選んでいてもその時選ばれていた パフォーマンスモードのデータが生きてしまうので、結局シングル音色が1個 アサインされているパフォーマンスモードをシングル音色と同じ数だけ用意し、 そこで通常の作業をして、音色が出来上がったらシングルとパフォーマンスを それぞれストアする、という方法を取った方が混乱しなくて済む。
それと、ボイスアロケーションがない。
つまり、TX802は16音ポリだが、3音色をマルチで組むとすると、例えば8+4+4 という具合に、各音色を何音ポリにするか設定しなくちゃいけない。 DX7にはマルチが無いし、TX802も音色をマルチで組むという発想のシンセの黎明期 に発表されたものなので当時としてはかなり画期的だった(と思う)が、それにしても 使いづらい事この上ない。

他の発音方式のシンセの代用は期待しないほうが良い。

他の音源方式と同じ音を期待しないほうが良いのは、どこ社製のどのシンセでも 同じだが、TX802にはPCM波形も無ければフィルターもレゾナンスもないし、 ノイズ・ジェネレーターもない。 冒頭に書いた通り、ものすごくサウンドレンジが広いシンセですが、 他の何かの代用にはならないと思います。


Fender CHROMA POLARIS 2

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細かい事情は知りませんが、ARPが倒産して、当時ARPが制作していたクローマの権利がフェンダーに移り、その後クローマの廉価版として発売されたのがクローマ・ポラリスだということです。
クローマ・ポラリスの電源部を改良し、価格を下げたのがクローマ・ポラリス2です。(パネルの色使いが違う以外は、ポラリスとポラリス2は、音から操作法から重量にいたるまで全く同じです。私は一時両方もっていましたが、音の違いは全く聞き分けられませんでした。)
ですからクローマ・ポラリス2はARP最後のシンセ、と言ってもいいのかも知れません。
シンセのブランドイメージの無い「フェンダー」から出た事や、発売当時は世の中が「今どきアナログぅ?」という時代だった事などが重なったからでしょうか、このシンセを知ってる人は非常に少ないようです。
 一体どういうシンセかというと、

6Voice、12VCOのアナログシンセである。

音はARPである。

リングモジュレーターも、オシレーターシンクもできるし、矩型波のみならずノコギリ波をもPWM出来る。

全パラメーターをつまみで操作出来るし、そのつまみの動きをMIDIコントロールチェンジで送受信出来る。(マニュアルにはっきり書いてはいないのだが、LOWER-C-8でON/OFFする。)

当時のアナログシンセとしては、かなりMIDIインターフェイスがよい。
受信だけならアフタータッチも効くし(Pedalパラメーター)、2音色同時にレイヤーする事が出来るが、この時かぶせた方の音色を「通常音色+1」のMIDIチャンネルで勝手に入出力するのでレイヤー指定(ポラリスでは「リンク」と呼ぶ)しとけば2マルチティンバーにもなる。MIDI改造した古いアナログよりはずっとMIDIが充実している。(ほんとは6音マルチにまで出来るんですが、アウトはモノ1chですし、リリースもすぐいっぱいになるので、私は全く使用していません。)

90年代前半の私のアルバム(「霊機」、「否定の果て」)ではポラリス(乃至ポラリス・)とTX802(乃至DX7)で音色の90%以上を作りました。
でも、ポラリスにも欠点があります。

システムがやっぱり古い。

昔のシンセをMIDI改造したものよりは遥かに機能は充実しているのですが、作った音色は1個ずつしかエクスクルースブで吐き出せないのにカセットインターフェイスでは全部セーブできるとか、MIDI OUTとTHRU端子が共用だったりとか、やはりつらいものがあります。

重い。

6Voiceで、ハードケースに入れると20Kg以上になるシンセというのは大変な負担です。

ノイズジェネレーターが変。

ポラリスには非常に有機的な音のするピンクノイズのジェネレーターがついてますが、その音に「どぅーんどぅーん」と心臓の鼓動の様な低音が混ざり込んでしまっています。どうやら「ノイズはおまけのつもりでいてほしい」という事らしいのですが、これが大変なくせもので、聞いた感じも気になるし、「どぅーんどぅーん」に合わせてメーターが振り切れてしまう所を見ると聴覚限界以下の低音成分がかなり入っているようで(ほとんど直列かも。)使いこなすには相当なコツと制限があります。

鍵盤が悪い。

ポラリス発売当時の時代状況を考えればベロシティ付いてるだけありがたいと思う所ですし、さわった感じもいいんですが‥
鍵盤を、力の限りぶっ叩いてもベロシティ100を超えることはまずありません。
ピアニッシモの曲を弾くと、半分以上のノートがベロシティ1になってしまいます。

とんでもなく壊れやすい。

この壊れやすさはちょっとすごいです。いくら言葉にしてもしきれないほど壊れやすいです。


 KAWAI K5000S

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カワイのK5000Sも、長く使いそうな気がしています。

K5000Sはいわゆる倍音加算方式のシンセで、これに倍音加算では出ない要素をPCM部(オシレーター部が倍音加算/PCM切り替え)で付け足す、というのが基本的な使い方でしょうか。倍音加算した波形をフィルタリングなどの王道な作り方で追い込んでいく、という事ももちろん可能です。通常のOSC→FILTER→AMPのシンセのOSC部分に充実した倍音加算シンセがくっついてる、という感じです。つまみもいっぱいついてます。
(株)河合楽器製作所さんのK5000Sページはこちら
尚、現在K5000SはVer,4となり、エクスパンション・キットME-1が標準装備されて、『K5000S PowerSounds』となっていますが、私の所有するK5000SもME-1を装備してVer,4にしてありますので、『K5000S PowerSounds仕様』となっております。以下、その事を念頭にお読み下さい。
比較的新しいシンセですから、このシンセの良さをわざわざ詳しく説明する必要もないでしょうが、私が素晴しいと感じているのに雑誌等であまり触れられないことを追加として書きますと、

鍵盤がものすごく良い。鍵盤タッチは好みが大きく分かれるところだが、この鍵盤は、私はとにかくいいと思う。特にタッチノイズ(鍵盤たたくときのバタバタいう音)が小さいのがすばらしい。普通タッチノイズの小さな鍵盤はぐにゃぐにゃして弾けたもんじゃないが、ちゃんとカチッとしたタッチで、それでいてかなり静かだ。

フィルターがものすごく良い。アナログというのともちょっと違うが、デジタルとも思えない実に繊細かつ有機的なフィルター。但し、好みは別れると思います。沈んだ、というか、ひなびた、というか、独特なフィルターです。

別につまみを使わなくてもエディットは楽。この辺は「いや、たいへんだよ」という人もいるかもしれないけど、DX/TXなんかを考えるとやはり楽だと思う。エディターソフトも出てるそうだが、私は使ってない。今のままで全然OKだから。

でも、そんなK5000Sにもやっぱり欠点があります。

つまみ類が多くの問題を抱えている。

K5000Sに限ったことではなく、ここ数年の大抵のシンセがそうなんですが、つまみ/ホイールなどのコントローラーの解像度が非常に粗く、音が階段状に変化するのが聞き取れてしまいます。パラメーター自体が粗い訳ではなく(そうですよね。CC送受信するわけですし)激しくつまみ/ホイール等を動かすとデータを間引いてしまうようで…たとえばエフェクトのコーラスLevelをホイールにアサインしても、ホイールを余程ゆぅーっくり動かさないとエフェクトが階段状に上がってそれが「プチプチ」ノイズになってしまいます。これでは使えません。
それにホイールやペダル/USERつまみ等にアサイン出来るパラメーターも結構限られており、かなりの不自由を感じます。
そして、何といっても「ひどい」(すいません。こう表現せざるをえません)のは、リアルタイムに動かないつまみがある事です。
たとえばアタックやリリース。つまみを動かすと、動かし終えたパラメーターバリューで次のノートオンから発音されるだけです。ですからたとえば、最後の和音だけフェードアウト風に伸ばそうと思ったら、最後の和音を弾く前にリリースつまみを動かさなければなりません。鍵盤を押したら、もう後の祭りです。それに、あとから「あ、リリースちょっと長すぎた」とつまみをいじっても何も起こりません。何が何でも次のノートオンからです。
要するに、K5000Sのつまみはエディットを手っ取り早くするためにはかなり使えますが、リアルタイムコントロール=音色上の演奏表現に使おうとするのは非常に苦しいのが現状です。
ついでにかきますと、各つまみはMIDIのCC(コントロールチェンジ)を送受信しますが、CCのナンバーを変えたりは出来ません。せっかく鍵盤が良いのに、他のシンセのパラメーターを同時にコントロール出来ません。ものすごく残念な仕様です。(私はYAMAHAのMEP4で一々コンバートしてます。)

KeyTrackが弱い。

K5000の倍音加算部にはフォルマントフィルターっていうグライコみたいなフィルターがあるけど、これにKeyTrackがついてない。なのでせっかくこのフォルマントフィルターで音を作り込んでも、1オクターブも上に行けば全然違う音色になってしまい、このフォルマントフィルターの魅力が半減しています。
又、PCM波形398番のF3#から上の音域で、アタックエンベロープのかかり方が明らかに変です。おそらくKeyMapに関するバグでしょう(Ver,4でまだ治らない…)。他、倍音加算部でも、条件は特定できませんがいじっていると時々一部の音域でエンベロープがおかしくなります。

モジュレーションが弱い。

今どきLFOが1個しかありません。
フォルマントフィルターに専用のLFOがありますし、ハーモニックエンベロープがループできるので倍音加算部ならボリューム専用のLFOとして転用できますが、普通のシンセとしてのLFOが1個しかないのです。LFOに用意された波形も少ないですし、フィルターや音程を複雑に変化させようとしてもどうにもなりません。
それに、FMモジュレーションもオシレーターシンクもリングモジュレーションもありません。『AMモジュレーション』という、リングモジュレーションをものすごく弱くしたようなのがついてるだけです。
「AMモジュレーションとはリングモジュレーションの事だ」と書いてある本と、「AMモジュレーションとリングモジュレーションは回路的にちょっと違う」と書いてある本と、両方見かけますが、私には回路的な知識が乏しいのでその辺は良く判りません。AMモジュレーションとリングモジュレーションの回路的な違いはこのへんに書いてあります。
ついでに書きますと、ピッチエンベロープのパラメーターもやけに少なくて、音程の特殊で自在な変化がほしいと思っても、LFOが1個しかない事と相まって、非常に苦しいのが現実です。

以外とサウンドレンジが狭い。

モジュレーションが弱い事と関係していますが、非整数次倍音が出せない(というか極めて出しづらい)ので、サウンドレンジがパラメーターが多いわりに狭いです。雑誌なんかには「非整数次倍音を出すには64〜128倍音をトランスポーズすればいい」とか書いてありましたが、それだとほとんどアタック音くらいにしか使えない音しか出来ないので、私は1〜64倍音を下にトランスポーズして、基音を切っていく事で非整数次倍音を得ています。でも、トランスポーズ出来る範囲が狭いので(と言っても通常のシンセの常識的な範囲ですが)、複雑な倍音はやっぱり出しづらいです。
この問題って、トランスポーズ範囲をものすごく広くとるとか、同時発音数を減らしてでもAMモジュレーションを充実した音にするとかすれば一気に解決するんですが…

5

ポルタメントがひどい。(すいません。個人的感想です)

ちょっと気の利いたシンセなら、ポルタメントは「等時間(音程〜音程間の移動が常に一定時間内)」と、「等速度(音程〜音程間を常に同じ速度で移動する)」を選べるものですし、古いシンセやちょっと気の利いてないシンセは、ポルタメントは「等時間」で固定だ…というのが私の感覚、というか常識だったんですが‥‥
何とK5000Sのポルタメントは「等速度固定」です
つまり常に音程〜音程間を設定したスピードで移動するわけですから、1オクターブ音が移動するのに、半音移動する時間の12倍かかる、という事です。
こういうポルタメントでメロディー弾いたらどういう事になるか‥‥
そしてもう1つ、ポルタメントのつまみですが、普通、右に回して行くとポルタメントのタイムが長くなって、左に回して行くとポルタメントのタイムが短くなっていき、左いっぱいにつまみを回し切ってポルタメント・オフ、というのが私の感覚、というか常識だったんですが‥‥
K5000Sではこれらが全部逆です。
右に回して行くとポルタメントタイムが早くなっていき、右いっぱいにまわすとポルタメント・オフです。
演奏中にポルタメントタイムを自由にあやつることは、私にはとても‥‥

6

内部処理が遅い、あるいは粗い(多分)

ハード的な事に関して私は無知ですので、『内部処理が遅い、或いは粗い』という言い方が正しいかどうか良く判りませんが、
まず、つまみを動かす時に、つまみの実際の動きよりもわずかに音が遅れて変化している様な気がします
又、アルペジエーターですが、発音タイミングがそれほど正確ではありません。なんとなく揺らぐなぁ、と思ってクロックをEXTにしてアルペジエーターをシーケンサーに録ってデータを見てみたら、発音タイミングがちょっとばらけてました。ちなみにゲートタイム(つまりNote Off)のタイミングもちょっとばらけます。BPMが遅いときはまだ「味」の範疇ですが、BPMをガーっと速くしたりすると、けっこう苦しいです…

‥‥と、このシンセの良いところをどうせみんな雑誌や店頭で知ってるだろうと、悪いところばかり書いてしまったので、お読みになった方はまるで「K5000Sは悪いシンセだ」と思うかも知れませんので、最後にちゃんと書いておきます。
K5000S、本当にものすごく良いです。
1990年代に買ったシンセで、私が売り払ったり人にあげたりせず、
自分の一部と感じるまでになったシンセは、K5000Sだけです。

 KORG microKORG

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思えばこの“シンセ紹介ページ”を書いてかなり年月が経ち、掲示板やら何やらで多くの人が情報をやり取りするようになって、こういうページの存在理由もあまりなくなってしまい、長いこと放置していましたが、少し時間があきましたので、コルグのmicroKORGのことも書いておきます。(2004/8/18)

このシンセ、長所と短所が入り交じっています。
長所は即短所でもあり、短所は長所に直結しています。
以下に、長所/短所を平行で書いてみます。
尚、私はボコーダー機能は使っていませんので、以下の文章には触れられていません。
又、MICROKORG XLは中身が全く別物なのだそうで、全然違う音がしますので、以下を参考になさらないで下さい。

とても小さく、可搬性がよい。我が家で最小のキーボード。 この手軽さは素晴らしい。価格も手頃だし、実にいい。

ミニ鍵盤3オクターブである。しかも物凄くタッチが悪い。白鍵と黒鍵のタッチ差もすごいし、鍵盤手前と鍵盤奥のタッチ差も非常に激しい。YAMAHAのDX100やCASIOのMA-120,MA-150よりも弾きづらい。それでいてベロシティ対応。
可搬性の良さと音の充実に、「これ1台でライブやってやる!指をこの鍵盤に慣らしてやる!」と決心して、2ヶ月くらいひたすら色んな調で「ハノン」弾いてたら(3オクターブなので始められる所から始めて鍵盤右まで弾いて引き返して来る“勝手ハノン”)、鍵盤が少し“波打って”きた。おまけに、ひたすらヴォリュームつまみを動かしてメロディ弾き込んでいたら、早くもヴォリュームつまみがガリってきた。
値段が安いのである程度仕方ないが、元々弾き込むように考えられたシンセではないと思われる。

2

大きさからは考えられないほど多機能である。ノコギリ波もパルスできるし、クロスモジュレーションもできるし、リングモジュレーションもオシレーターシンクもできる。それどころか、オシレーター部にノイズがあって、そのノイズに独自にフィルターとレゾナンスがかけられる。つまり、フィルターを犠牲にしないで発振ノイズをつくれる。
KORG独自のDWGS音源部も、「DWGSってこんなに音良かったっけ」と、DW-8000辺りを思い出しながら感心する。ちなみにYMO「BGM」で有名な“無限音階”波形はDWGSの35番。

嘘みたいにエディットしづらい。
直感的なエディットはまず無理。本体の小さなマトリクス表を見ながら、中央のダイヤルをガリガリまわしてつまみの役割を決めてエディットする。せめてシーケンシャル末期の一部のシンセみたいに、マトリクスの縦軸がスイッチ式になってればまだ判りやすかったのに、一体どうしてダイヤルにしたんだろう。
クロスモジュレーションが正弦波だけだとか、そんなのマトリクス表を見たって判らない。液晶画面すらないので、今いじってるパラメーターが何なのか理解するにはかなりの習熟を必要とする。
専用エディターソフトが配布されているが、30分ほど使用してみて、ふと「手軽なシンセのはずなのに、なんでこんなことせにゃならんのだ」と思ってソフト使用をやめた。
ちなみにDWGSの35番の無限音階波形だが、ポルタメントで上げて行くと、途中で「しゃごっ」という折り返しノイズ(みたいなの)が入ってしまうので、YMOの“アレ”みたいにはなりません。

3

音色の切り替えスイッチに多くの面積を割いたり、ヴァーチャルパッチでコントローラの役割を設定できたり、やはり“ライブで演奏することを重視した、非常に自由なポータブルシンセ”という位置付けらしい。

4音ポリ。これ1台でライブやるのは相当な工夫と練習と勇気がいる。サスティンペダルも挿せない。
ヴァーチャルパッチでアサイン出来るパラメーターがとても少ない。アサイン先もベンダーかホイール。右上部のツマミ類は、デフォルトでカットオフだなんだと役割が決まっていて、ここにはつまみの役割をアサインできない。だから、「この曲はアタックENVを遅くして弾きはじめて、リングモジュレータをかけつつアタックENVを早くしていって、途中でポルタメントタイムをいじりながら弾き、最後はペダルで音を伸ばしながらレゾナンスとボリュームを上げつつ、最後にディレイをどばーっと増やして終わらせる」といったイメージを実現するのは事実上無理。外部にMIDIコントローラをつければ出来るかもしれないが、それでは可搬性とシンプルさという美点が無くなるも同然。
4
音が良い。ローファイに良い。
かなりロービットな感じの音がする。ディレイの消えぎわなんか、ロービット化させるプラグインをかけたみたいにキラキラと音が散っていって、大変美しい。
ローファイ。音悪い。

 KORG A2

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番外編です。
コルグのA2はシンセではありません。エフェクターです。
実は、このエフェクターで作ったエフェクトが、私の音の基本となっているケースが非常に多いのです。
インスピレーションを実現する道具として、あるいはインスピレーションを得る道具として、A2が製作の最初の段階にあるケースが非常に多いのです。
奇異に聞こえるかもしれませんが、まずA2のエフェクターのプログラムが決まっていて、そのエフェクターに合わせてシンセの音色を作り、それに合わせて音符的なるもの〜和音や旋律〜が決まって行くというプロセスが、私の場合非常に多いのです。
それほどまでに、私はこのエフェクターに頼っています。
簡単に特徴を挙げておきます。
・まず、1UラックマウントエフェクターA3が発売され、その後それを改良した(たしかアルゴリズムを増やしたんだと記憶しています)A2や、上位機種で2UラックマウントのA1(たしかアルゴリズムを自由に組めるんだと記憶しています)が発売されました。私が持っているのはA2ですので、書いている内容がA3やA1に当てはまるとは限りません。(特にA2とA3は見た目がソックリなのでお気をつけ下さい)
・裏面にラインイン/アウトがあり、インはいわゆる「L―MONO式」です。スイッチ切り替えで+4dBも受けられます。MIDIイン/アウトもあってプログラムチェンジを受けたり、作ったエフェクトプログラムをエクスクルーシヴで出したりできます。
・パネル前面にギターインやインプットレベルつまみがあります。どうやらギタリストが使用することをかなり考慮した製品のようです。
・一つのプログラムで、コンプ/ディストーション/エキサイター/タップディレイ/コーラス/リバーヴ、というふうに6種類までのエフェクトを同時にかけられ、それぞれのブレンド率も完全に自由です。普通にエフェクターを並べて配線するのとの決定的な違いは、そのブレンド率や各パラメーターを一つのプログラムとして記録しておけるということです。
・音もわざとらしくなくて、それぞれのエフェクトが渾然一体と曖昧に一つの独自のエフェクトとなるところまで追い込めます。もちろん、リバーヴだけといった使い方もできますので、センド/リターンで使うためのプログラムや、インサーションで使うプログラムを作ったり、両方やります。リバーヴは非常に効きが良く、シンセの内臓リバーヴのように「Wetを100%にしても全然足りない」なんてことはありません。

永い間、コルグのA2は、私の{秘密兵器}みたいなものでした。
ですが、もう10年以上、{後継機種}を探し続けてもいるのです。
ソ○ーのV77も、非常に良い製品でしたが、自由度という点でA2にはかなわなかった。
YA○AHAのSPXも、貴重なプロ機ですが、自由度という点ではA2には全然かないません。
TC―エレ○トロニクスにも歪みやダイナミクス系までカバーした製品がいくつかありますが、非常に残念なことに、私はT社のリバーヴがあまり好きではありません。

そうこうしているうちに、ラックマウントエフェクターというもの自体が、猛スピードで減り始めました。絶滅危惧種と言ってもいいくらいです。
私のA2はもうボロボロです。内部電池も何度も換えましたし、オーバーホールにも何度も出してます。時折変な動作もするようになってきましたし、なにより液晶が老朽化して文字がすっかり見づらくなりました。それに、今となってはやはり相当にSNが悪いです。(ノイズゲートも設定できるのですが、ゲートでリバーヴを切るというのもなかなか難しい作業ですし、内部ゲートで切ってもなお現代の価値観で言えばノイズが乗ってるような機材です。)
SNの良い、A2相当の機能を持った、堅牢な1Uエフェクターを、私は10年以上探し続けているのです。

今のところ、唯一近いと思ったのは、皮肉にもAmpliTubeというプラグインエフェクトです。
私は、1Uのハードウェアで欲しいのです。
もしかして、私の知らないところでギタリスト用とかであるんじゃないかと思ったこともありましたが、探しても見つけられませんでした。機能として近そうなものを見かけても、3〜4万でフットスイッチ式のやつだったりすると、「ほんの数年で壊れるんじゃないのか」と思うと怖くて買えません。
どなたか、A2からうまく移行できた方がいらっしゃいましたら、私に教えてください‥です‥‥(この項目:2006/2/1初稿Upload)

他にもいくつか持ってますが、この位にしときます。
誰かのお役にたちましたかねぇ‥…

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2014追記:
20世紀末にこのページを書き始めてから、ずいぶんと時間が経ち、
もはや状況はかなり変化しました。
現在の使用状況と、ここに書かれている文章にはかなりのずれがあるのですが、
記録として、このページを削除せずに保持することと致します。

(C)1997〜2014 Mushio Funazawa

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